大海とむ先生の「悪し妻かたり」第5話(とるべき道)を読んだのでレビュー&感想をご紹介します。
目次
悪し妻かたり5話~とるべき道 注目ポイント
吉次郎への思慕を自覚する水松女ですが、だからこそ自分は隣に並ぶのに相応しくないと身を引こうとします。今は悪評を利用して盾になると告げると、新しい妻を迎えたら捨て置いて欲しいと申し出ました。
吉次郎は、その方が水松女の傷を癒せるならと承諾しますが心の底では抗う自分に気付きます。優しすぎる2人だからこそお互い本音をぶつけることができません。でも、ある日水松女の本心を吉次郎は垣間見てしまい…。
悪し妻かたり5話~とるべき道あらすじ(ネタバレ注意)
水松女の居宅で―。
吉次郎から子犬が生まれたと聞いて水松女はほっとしました。騒ぎを起こしてしまったので気になっていたのです。
身を引く覚悟の水松女
吉次郎があの日の孫四郎の暴言を詫びてきました。水松女は、悪評を正そうとしてこなかった自分にも責任があるし、孫四郎が警戒するのは忠義からくるものだから責めないで欲しいと伝えます。得難い存在だとまで口にする水松女。
吉次郎は兄の目を誤魔化すために水松女の悪評を利用していたことを白状すると、孫四郎にああ言わせてしまったのは自分の責任だと頭を下げました。
こういう真摯な態度が水松女の心を乱します。離れたくなくなると…。しかし水松女は心に決めていました。妻としての役目を果たせないから悪評が役に立つのなら本望だと切り出します。
妻であること、女であることが重荷だと言われて、吉次郎も何も言えません。水松女は、蛇神は子を生すことも可能だと言ったけれど、男性に対して恐怖心を拭えない身ではそれも叶わないと詫びました。
水松女は後に吉次郎に相応しい妻が現れたら身を引こうと思っています。その時は離れた場所に小さな畑でもいただければ表には姿を現すことはしないと淡々と話す水松女。吉次郎は水松女の申し出は受け入れますが、重い足取りで居を後にしました。
水松女は吉次郎が敵将の寡婦である自分に対しても妻として誠意を見せ、気遣ってくれた優しさにつけ入ったのだと自分を責めます。本当に悪しき妻だと呟きました。
吉次郎の葛藤
水松女から捨て置いてくれと告げられた吉次郎はどうにも落ち着きません。どこか上の空で家臣たちからも訝しく思われる始末。
あれから何度か水松女を訪ねたものの、体調不良を言い訳に会うことは叶いません。好ましく思われていると自負はしていても、やはり自分も水松女にとって恐ろしい男の一人でしかなかったかと思うとやるせない気持ちになります。
つゆが本城から戻ってきた三左から書物を預かっていると言って吉次郎に持ってきました。それは水松女と一緒に読もうと思って頼んだもの。本の話をしているときに、水松女の心身の傷はまだ生々しく残っているのだと吉次郎は実感しました。
吉次郎は水松女との距離を縮めることを急かしているつもりはなかったものの、待っているという言葉でさえ傷を癒えないものにしていたのかもしれないと自戒します。つゆに俺は酷いことをしているのかと問う吉次郎…。
つゆは、殿はできる限りの配慮をしていると答えると、ただ優しいことがすべてを癒やすとは限らないと進言しました。
気が進まないのは水松女を捨て置くことか、それとも側室をおくことかとつゆに問われた吉次郎は、どちらも気が進まないと答えます。
吉次郎はどんな女性が妻となっても情を育もうと思っていました。水松女を正室に迎え、彼女とそうできることを嬉しく思ったのも事実です。
それが他の女性と置き換わったとしても、同じように情を通わせればいいと頭ではわかっていました。でも、それを拒む心に吉次郎は気付いてしまいます。荷が重いと言う水松女を強引に引き止めたいと思うほど求めていました。
水松女のためを思い、望みをきいてやるためには距離を置くしかないと思う吉次郎。いっそ実家に帰したほうがいいと考えます。吉次郎はもうとっくに水松女に情が移っていることを自覚するのでした。
吉次郎に抱かれるように…
水松女は吉次郎の冬用の小袖を縫っていました。糸が足りなくなったので、いとが取りに行ってくれることに。
喜久も庫裏へ行く時間で村に使いに行った美与はまだ帰っていません。水松女一人にさせるのを喜久は心配しますが、誰もここには来ないからと2人を送り出しました。
水松女は吉次郎の小袖を手に縁側に向かいます。糸くずを払いながら吉次郎のことを考える水松女。
屋鉄は体格も大きく水松女にとってただ恐怖の対象でした。でも吉次郎の傍では安らぎさえ感じます。夫というものがすべて屋鉄や情の薄い父とは違うと思ってもいる水松女は吉次郎なら…と淡い想いを抱き…。
そのとき、吉次郎は滝見の間に来ていますが人の気配がないので部屋を窺っていました。視線の先に水松女を捉えた吉次郎は目を疑います。
水松女は吉次郎にあつらえた小袖を胸に抱き至福の表情を浮かべていました。殿…と呟きながら。
吉次郎の口から『手遅れだ』と言葉が漏れました。振り向いた水松女は吉次郎を見て動揺します。そんな水松女に吉次郎は、そうしていいのだと、思い違いではないと言ってくれと、そっと体を寄せてきました。
抱きしめるのを躊躇うように、水松女の背に吉次郎の手は緩やかに回されています。水松女は怖さなどまったく感じません。そっと吉次郎の胸に顔をうずめました。
お互いの想いを打ち明ける
吉次郎は水松女に正直な気持ちを伝えます。与えられたからではなく本心から妻にしたいと。
水松女に本音を問いますが答えを待たず、都合の良いように受け取ることにすると言葉を続ける吉次郎。お互いに背負うものはあるけれど共に乗り越えて欲しいと伝えます。
吉次郎の言葉を受け、水松女は悪評のある身ではあるけれど殿を助け労り、子を生すのも自分でありたいと本心を綴りました。
私にできるだろうかと不安を覗かせる水松女に、吉次郎はできないことは別の道を考えてもいい、少しずつ前に進もうと優しく語りかけます。頷く水松女に、吉次郎はもう少し深く触れてもいいかと問いました。
悪し妻かたり5話~とるべき道感想
ようやく2人の気持ちが通い合いました。水松女が吉次郎の小袖を抱きしめるシーンは感動です。実際は抱きしめるというより、まるで吉次郎に抱きしめられるように着物に覆われているという描写です。漫画で見てほしいです!
確かに、吉次郎は水松女の気持ちを大事にしすぎていました。男の人が怖い水松女を慮って待つつもりだったのはわかるし、それは正解でしょう。でも、それが水松女の負担になっていると考えてしまったのはちょっと違う。
まぁでも、これでもう水松女も傍を離れるなんて言い出さないでしょう。あとは加左の家中の人間に対してどう振る舞うかが気になります。
悪し妻かたり5話 まとめ
今回は、「悪し妻かたり」第5話のストーリーや感想を紹介しました。
水松女は悪しき正室どころか最高の御方様なのにね!