大海とむ先生の「悪し妻かたり」第2話(屋鉄の供養)を読んだのでレビュー&感想をご紹介します。
目次
悪し妻かたり2話~屋鉄の供養 注目ポイント
水松女の前夫、屋鉄長治は山賊上がりの暴君で、領民から搾取するばかりで民を顧みることはしませんでした。水松女は自分も放置されて畑を耕して暮らしていたのですが、領民のためを思い、内緒で薬草など売れるものを作らせ、そのおかげで民はなんとか生き延びた状態だったのです。
加左領となってからも吉次郎に言わずに作らせていたのですが、ある日見つかってしまいました。咎められると思ったのですが、吉次郎は事情を聞いて納得します。水松女を罰するどころかこのまま続けるよう推奨すらしました。
さらに吉次郎は水松女の考えを女だからといって疎かにすることもありません。水松女は吉次郎を噂以上に聡明で寛容な人物だと思いました。
今回の注目ポイントは、水松女が長治にいかに酷い扱いを受けてきたのか吉次郎が知ることになります。そして蛇神の庇護を受けているという事実も目の当たりに…。
悪し妻かたり2話~屋鉄の供養あらすじ(ネタバレ注意)
吉次郎は水松女が許可もなく領民に畑をやらせていたことを罰しませんでした。それどころか詳細を求めてきたのです。
器の大きい旦那様
ある日、水松女は谷あいにある小さな畑に吉次郎を案内しました。そこは水が集まる場所で水辺の草花を栽培していますが、万が一攻められたときの足止めの役目も兼ねています。
そう説明したところで、水松女ははっと気付き女の浅知恵で出過ぎた真似をしたと謝りました。しかし吉次郎は備えがあるのは良いことだと褒めてくれます。さらに水松女が領民のことを考えてきたことを理解してくれました。
薬草の知識をどこで得たのか問われたので、書物からだと答える水松女。ここでも長治に小賢しいと蔑まれたことを思い出し言葉を詰まらせます。
ところが吉次郎は荒迪家は公家や神社と付き合いがあるから珍しい書物もあるだろうと、水松女が本を読むことに対して揶揄したりはしません。むしろ今度見せてくれと言います。
自分の本も興味があれば見るかと訊かれ、水松女は思わず目を輝かせました。我に返って動揺する水松女を優しい目で見る吉次郎。
水松女は吉次郎のことを本当に寛容な主だと思います。だから自分に対しても優しいのだろうと。
子供を産めない正室だから
屋敷に戻った時、水を汲んでいた下女がよろけて水松女の足を濡らしてしまいます。震え上がる下女に、水松女は気にしないでいいと声をかけようとしますが、その時孫四郎が下女を叱りつけました。
孫四郎の大きな声に、水松女は顔をこわばらせます。下から見た下女はものすごい目で睨まれているように感じてしまいました。震える声で許しを請い始めます。
吉次郎が声が大きいと孫四郎を諌め、下女に優しい声をかけたので水松女も正気を取り戻しました。下女には詫びますが周りにいた家臣たちの目には水松女が恐ろしい目で睨みつけ、あたかも何かしでかすように見えたようです。
水松女も自分がどんな目で見られているかよくわかっているので、居宅に戻ると美与たちの前で、下女を怖がらせてしまったと肩を落としました。
美与たちは水松女が孫四郎の声で固まってしまったことをわかっています。それでも、水松女は武家の娘が怒声くらいで怯むことを恥じていました。
話題はもっぱら吉次郎のことになり、美与も喜久も待遇に満足しています。優しい吉次郎のことだから側女を置かないのではと言い出しました。そんなことは許されないと水松女が言うと、置いたとしても正室の水松女を蔑ろにはしないだろうと喜久が慰めます。
しかし水松女は、加左の結束ためにも自分のような蛇女は吉次郎の隣には似つかわしくないと口にしました。吉次郎を警戒する兄によって、政治的な思惑で嫁がされたこともわかっています。
でも、正室を追い出したとなったら外聞も悪いから、屋鉄の時のように放置してもらうのが一番いいと言いだす水松女。美与は、それも側女次第だと返します。
その時喜久が、城に身許の良い侍女を迎え入れる準備をしていると聞いたと打ち明けました。それは吉次郎の側女候補であることを意味しています。
水松女は、吉次郎は長治とは違うけれど備えはしておきましょうと強がりました。美与も同意します。加左の殿様は悪いようにはしないと思うという喜久に、水松女もそうねと同意しました。
水松女は、できることなら妻として吉次郎の隣にいたいと思い始めています。でも、吉次郎の隣に自分はふさわしくないと諦めていました。
一方吉次郎も、一緒にいる内に水松女の思いもしない一面を垣間見て心の距離を近づけているようです。しかし孫四郎は気を許すなと苦言を呈しました。屋鉄の遺品を求めてきたことも気にかかっているのです。
吉次郎が見たものは!?
ある日、吉次郎は屋鉄の遺品である腰刀を水松女に渡しました。その時、水松女は今夜供養をするから部屋の周りに誰も近づかせないよう願い出ます。お付きの侍女たちでさえ近づくなと…。
夜、部屋に籠もった水松女は屋鉄の腰刀を備え何やら儀式を始めます。吉次郎は、もし水松女が孫四郎の言うように腹に一物持っているとしたら水松女を手にかけなければと悲痛な思いで様子をうかがっていました。
屋敷の中に入ろうか躊躇っていると、不穏な声が聞こえてきます。ただならぬ雰囲気に、吉次郎は廊下を伝い部屋の前まで行きました。
中からは男の声が聞こえてきます。隙間から中を覗き見ると、屋鉄の怨霊をおどろおどろしい蛇が締め上げていました。
蛇が横で冷めた顔で佇む水松女に、この男をどうして欲しいと問いかけます。なんの興味がないから蛇神様の意のままにと答える水松女。蛇神は、水松女にしたことをそっくり返してやろうと言うと、水松女の着物をはだけました。
水松女の顕になった上半身は、無数の傷跡や火傷の痕、縛られた痕が刻まれています。それは目を覆うほどでした。
長治の呪縛からの解放
吉次郎が鍔(ツバ)に手をかけたので気配に気づいた水松女。吉次郎の顔を見て動揺し、蛇神の力が弱まってしまいます。その隙きに長治の怨霊が水松女に襲いかかりました。
長治の怨霊は、子を生せない水松女を罵り役たたずの印だと宣うと、腹につけられた十字の焼痕を見せつけます。吉次郎は長治の怨霊から水松女を奪い取ると、その額に小刀を突き刺しました。
もがき苦しむ怨霊に、蛇神は水松女を苦しめたのだから子などできるはずもないと告げます。蛇神が子をできなくしていたのかと吉次郎が問うと、そうとも言えるしそうとも言えないと曖昧な答え。
水松女が無意識に拒否をしていたのだと宣う蛇神は、長治から寵愛を受ける努力をしなかった水松女を責めるようなことを言ってきました。
水松女は長治から受けた虐待を吐露すると、そんな男に媚びて体を開くことなどできなかったと訴えます。魂だけは汚されたくない、そうでなければ心が死んでしまうと涙を流しました。
吉次郎は怨霊を一刀すると、心も体もあの男のものにはさせなかった水松女は、汚れてなどいないと確固たる意志を持って伝えます。
吉次郎の言葉を受けた水松女は、長治の腰刀を怨霊に突きつけました。あなたにはもう囚われたりしないと告げて…。
悪し妻かたり2話~屋鉄の供養感想
蛇神の庇護を受けた家門というのは本当でしたね。これは水松女が隠しておきたかった一番重要な秘密だったのでは?普通の人なら気味悪がります。
それにしても水松女の体の傷は酷いものです。長治が玩具のように弄んだことがよくわかる…。あれを見たら、亡き夫の無念を晴らそうと思っているなんで絶対思えません。
それに、子供ができなかったのは水松女の機能的な問題ではないことが判明したのでは?あくまで気持ちって受け取っていいと思いました。
これってけっこう大事だと思うんですよ。荒迪の娘が生んだ子が婚家の隆盛をもたらすってだけだと長治みたいに強奪する人がけっこういるはず。
でも、そこに心がないと子供ができないから邪心のある家門には生まれないってこと。ただ、水松女みたいに耐えられなくて蛇神の言うように寵愛を受ける方にシフトする娘の方が多いのかも?
悪し妻かたり2話 まとめ
今回は、「悪し妻かたり」第2話のストーリーや感想を紹介しました。
吉次郎はしっかり水松女を守ってくれそう!でも、水松女は頼るばかりの女ごじゃないのだ!